零式艦上戦闘機(新潮選書)
わたくしより10歳くらい若い弁護士の著書。
意外に読みやすかったので読破した。
序盤はわかりやすく零式がどのような戦闘機であるかということと、戦闘機の機動に関する基礎知識などが説明されている。
他の本ではけっこう省略されていることなので、これはこれで価値があると思う。

ワイルドキャットより性能が優れている戦闘機でも、集団戦闘になると機体の優劣はあまり大きな問題ではなくなり、パイロットの技量と戦術(低いレベルを如何に引き上げるか、低い技量でも戦える戦術をあみだすか)が大きな要素となる。
書かれていることを読むとそのとおりと思えるが、機体の優劣と技量がものをいったガダルカナル前までは日本軍が優勢であった。
アメリカの物量作戦に中盤以降巻き込まれてしまったことが日本の敗因であるように思える。
(本著では「アメリカとの消耗戦」はガダルカナル以降ではなくガダルカナル後の中部太平洋各所でおこなわれた航空戦以降のことを指すらしい)
実際、集団戦闘対集団戦闘では状況次第では零式でヘルキャットと5分以上の戦いができている。
中部太平洋アメリカ艦隊による基地殲滅戦では敵攻撃隊の早期発見ができず(レーダーの精度不足とレーダーを設置する島・前線基地がなかった)有効な迎撃ができなかったことが主因。
いろいろ新解釈?の多い本であったので、値段の高い割に思ったよりまともな本だった。
しかし基本的に上から目線の文体で、これまでの説を覆すことに主眼が置かれているようで、あまり気持ちの良い文体ではなかった。