最近新刊にめぼしいものがないため、読みかけの本を物色。清張の長編にとりかかった。

●「空の城」

第1章を読んで放置していたが、物語は清張らしくない商社モノ。
山崎豊子不毛地帯を想像させ、似たような小説ならばと放置していた。
あとがきを読んでみると清張が新ジャンルに挑戦した意欲作ではなく、実際に起こった事件(安宅産業)を題材にした話であることがわかった。
戦後におこった事件の分析については「日本の黒い霧」などで定評があるため、なんとなくとっつきやすくなったので再開。
清張本人のコメントによると、実際に起こった事件をモチーフにしてはいるが、あくまでも事件自体はシナリオ進行上の背景であり、その世界に生き翻弄される人々を書くことが主題である、とのこと。
当初予定していたプロジェクトが破綻し、資金繰りが苦しくなって破滅に向かっていくのであろうが(現在第5章)、プロジェクト立上当時の安心感が決壊し、徐々にゆっくりと壊れていく様子は読んでいて非常に楽しい。
強固に作り上げた砂山が少しづつ麓から砂を削り取られていくさまを想像させる。