・閃光
 本屋の新刊コーナーに並んでいたので購入した。600Pほどだったが、たいして時間もかからず読み終えた。
 表紙には「3億円事件のモンタージュ写真」(同一のものではなく、模したもの)があり、本作品が3億円事件をテーマにしていることがすぐわかる。
 この「3億円事件」は昭和43年12月10日に起こった、現金輸送車強奪事件。当時の貨幣価値を考えると、現代であれば30億円ぐらいになるだろうか。
 現場には多数の遺留品があるため早期解決が見込まれたが、捜査は難航し結局7年後に時効を迎えた。

 資料が少ない事件であるため、参考文献も一橋文哉「三億円事件新潮文庫)」ほか数冊。
 本作は「犯人は複数」「自殺した警察官の息子が犯人グループの重要人物」という推論を元に、一橋文哉とは違った事件象を描いている。
 あくまでもミステリーであるため、事件の真相追及が目的ではなく、ストーリーを楽しむための作品。
 三億円事件の捜査をつづけたがために警察に追われることになった刑事、犯人グループのメンバーそれぞれのストーリー、そして三億円事件の被害者とも言える人たち。
 それぞれの視点からの描写が繰り返し行われ、ゆっくりと事件は進展していく。
 しかし・・・・・一読すれば十分な内容。期待ほどでもなかったというのが感想。
 本当の犯人グループが手記でも出してくれないだろうか。