一緒にNOVと球場へ向かう際に、最近太平洋戦争に関する本を読んだとのことで内容を簡単に教えてもらった。
「太平洋戦争」における日本軍の戦術(戦略)に関する本のようで、1コンテンツの内容を教えてもらったのだが・・・。

真珠湾攻撃により停泊中の戦艦を撃破しても、湾内の深度は10メートルに満たないためすぐに艦船は引き上げられて修復されてしまう。
(現に1944年以降、修復された戦艦群がグアム・サイパンなどの日本軍拠点を艦砲射撃している)
真珠湾攻撃で一時的に戦力を削減しても意味はないのではないか、ということのようだ。

このコンテンツに対する私の感想。

筆者の太平洋戦争に対する視野が「戦後からみた結果論」であり、太平洋戦争開戦時の日本軍の戦略構想を踏まえて考えていないように思われる。

少なくとも海軍首脳は「真珠湾が浅いため、戦艦を撃破しても引き上げられて修復されること」は認知していたし「一時的な撃破」で十分だと考えていた。
まず「真珠湾が浅いことを日本海軍が認知していたこと」は真珠湾奇襲用の魚雷を実際に開発させ、奇襲部隊に配備していることで明らか。
真珠湾は海底までの深度が浅いため、通常の魚雷では投下後に海底に着底して爆発してしまう。
投下後に浅い深度から推進をはじめる魚雷が開戦直前に完成、真珠湾攻撃に間に合ったという経緯がある。

この真珠湾攻撃で一時的にせよアメリカ軍の戦艦を無効化することの意味はいくつかある。
(1)山本五十六も語っていたように、1年〜1年半の短期間ならばアメリカに対して勝機がある(それ以上の長期戦になると国力の差が出て勝てない)。
(2)日本軍の開戦当初の戦略は中部太平洋において艦隊決戦を行い、これによりアメリカ海軍を撃破することによって戦争に勝利することであった(開戦当初の空母戦力の扱いはあくまでも補助)。

長期戦になると勝てないので、短期決戦を挑んで艦隊を撃滅して有利なうちに講和条約を結ぶこと。
アメリカ本土を攻撃して白旗を上げさせたり、ハワイを攻略することなどは視野に入っていなかっただろう。
大戦後期、アメリカ軍が大規模な艦隊を率いて日本の拠点を潰しながら日本本土までこれたのはそれだけの国力があるからで、少なくとも日本の国力でハワイ完全攻略(攻略後の占領維持も含める)は不可能。
太平洋の戦争に短期間で勝利して、豊富な資源を有する東南アジアの諸国の統治権を獲得することが理想であったはずである。

中部太平洋の艦隊戦で勝利するためにはまず、日米の戦力差を埋めなくてはならない。
ワシントン軍縮条約で決められている日米の主力艦の比率は5:3。日本はアメリカ軍の6割の戦力しか持つことを認められていない。
訓練によってもこの戦力差を補うことは難しい。
したがってこの艦隊決戦に参加できないように、無効化することが求められる。
つまり真珠湾攻撃により敵戦艦群を一時的にせよ無効化することが目的であるので、当初構想されていた艦隊決戦に勝利するための敵戦力削減作戦(の1つの案)として必要な作戦であったのである。

しかし、日本軍が太平洋戦争をどうやって終わらせるつもりであったかはアヤフヤな点が多い。
勝って勝って勝ちまくって相手に頭を下げさせて終戦
現実には当初想定されていた「勝って勝って勝ちまくる」作戦が(下記のように)すべて失敗してしまった為戦争を終わらせることができず、結果として長期戦になってしまったというのが史実ではないだろうか。

MO作戦(イギリス空軍基地攻略作戦):珊瑚海で史上初の空母決戦が勃発。敵空母撃沈1大破1と優勢(日本軍空母中破1、軽空母沈没1)であったが空母戦後に作戦中止となり攻略失敗。
MI作戦(ミッドウエー基地攻略作戦):ハワイのノドモトにある航空基地攻略作戦。精鋭の空母部隊全滅(空母沈没4)したため、作戦中止。
FS作戦(フィジーサモア方面攻略作戦):アメリカとアーストラリアを分断するための作戦。
 具体的な作戦発動はなされていないが、ガダルカナル島に航空基地建設中に奇襲を受け、アメリカ軍に奪取される。この後この航空基地をめぐって日米が壮烈な戦いを繰り広げ、長期消耗戦に突入。結局日本が撤退する。