場所は以前勤務していたことのある川崎市内の駅から徒歩5分弱、街道沿いにある雑居ビルの2階にあるラーメン屋。立地条件はお世辞にもよいとはいえず、店内も殺風景で飾り気がない。店長は芸人・よゐこの濱口似の若いお兄さん。店内に湯気が充満し、スープをとりおわった後のトリガラの塊が鍋からとりだされている。
スープ・麺などは現在も研究中であり、いま売り出されているラーメンは必ずしも完成形ではないが、いつ完成するかもわからない。人もあんまり来ないし、完成する前に店がなくなるんじゃないの?と考えていたらコワモテの堅気には見えない団体さんがやってきた。
特に開店時にトラブルがあった訳ではないし、今は客を選べる立場ではないので、店長が注文を伺い未完成形ラーメンを人数分作って出した。完食後、思わぬ好評価が返ってきて、この街道は事務所までの出勤の際に毎日クルマで通っているので都度店に寄ることにしたいのだそうだ。
店長はイエスともノーともいえぬ曖昧な返事をしてしまった為、きっと明日からこの御一行は毎日来ることになるだろう。はじめは愛想がよくても不要な融資話か何かを持ちかけられて、結果とんでもない借金を背負わさせられるのがセキノヤマだ。
この店も長くないかもな〜、と半分アキレながら割烹着を脱ぎ捨てて駅前のライバル店へ味の偵察に出ることにした。駅前のゴチャゴチャした建物の中に、とんこつ味のラーメンを食べさせる店がある。店長は赤井英和もしくは佐々木健介似で体格がいい。この店もラーメン自体は未完成系で麺がいつも固い。ズルズル麺をすすりながら店内を観察する。店はウチよりも比較にならないほど狭い。これでラーメンが美味ければ帳消しになるんだろうが、現在はウチよりもまだマシ程度のレベル。この駅周辺に美味いラーメン屋が1つできれば2店舗ともアッという間に吹き飛ぶだろう。
勘定を済ませた後自分が働いている店に戻ることにしたが、駅から大通りの信号渡ってしかもビルの2階で客来るかねえ、とつい自分の店の立地条件の悪さについて考えてしまった。

・・・・・これが初夢。ラーメン屋に就職すること自体考えたことがないのに、なんでだろ。