キットが出来上がると当然に飾りたくなるが、部屋にはそのスペースもないので、箱に収納したたまま。箱自体も小さくはないので、いずれは対策を考えないといけなくなってくる。
作ったキットで対戦できたらV3とガンダム戦争勃発だなと考えたら、ふと「プラモ狂四郎」を思い出した。
この漫画はできあがったプラモデルをシミュレーターにセットし、実際に自分がそのプラモに搭乗して相手と戦うという、プラモを使った対決漫画。
(終盤はご多分に漏れずトーナメント形式の大会に)
ダメージを受けた箇所はプラモ自体に同様のダメージが加えられるので、対決が終わったあとはたいていキットがキズモノになる。
反面、自分の作ったキットに改造を加えれば、その機能は戦場でそのまま生かされるので、市販されているキットの弱点を補う改造もまた必須になってくる。
(当時は接着剤不要・ポリキャップなどいというものは影もカタチもなかった)

例1:主人公である京田四郎は自作したヘビーガンダム(1/144ガンダムのキットに自作パーツを取り付けMSVヘビーガンダムを再現)に重量感をもたせるために、足裏に粘土をつめたが、戦場ではこれがアダになった。
例2:主人公の対戦相手が1/144ゲルググのキットをベースにMSVゲルググキャノンを作って参戦、ゲルググの弱点である「肩の未稼動」を解消するための改造は行ったが、腰を回転させるとパーツが外れるというもうひとつの弱点に対する改造を怠ったため敗北した。
例3:1/60ドム(当時は2000円もする高価なキットだった)を購入した四郎の友人・健は戦闘開始後わずか数コマでコクピット直撃のダメージをうけ、2000円があっという間にゴミになった。

実はこの戦闘シミュレーターは主人公ほかその他友人のいきつけであるプラモ模型店「クラフトマン」の2階をすべて使って設置されているかなり大型なもので、店の外観などから推測するに、軽量鉄骨2階建ての店舗では2階の床下などアッサリ抜けてしまうのではないかというほどの大型なもの。

いまさらながらクラフトマン店長はこれほどの機械を、なぜ、どうやって準備したのかが謎でしょうがない。
確か第1話で「店長が開発した」というくだりがあったような気がしたが、いくら独自で開発するコンピュータ技術・機械工作技術があったとしてもお金がないと何も始まらないはず。
家が資産家であれば捻出できるのだろうが、とてもそのようにはみえない。
疑問点を整理すると・・・

(1)シミュレーターの開発資金の調達方法。
 金融機関で借り入れを行うとしても資金使途および返済原資は明確にしなけえればならない。
 資金使途:シミュレーションマシンの開発費用
 効果:本シミュレーションマシンを設置することにより来店者が増え売り上げの増加につながる。またシミュレーション戦闘を続けることにより、消費者(主人公ほか)のプラモデル商品が破壊されるため、消費者の購買意欲を向上させる効果もかなり期待できる。
 返済原資:向上した売上金を返済原資とする。来店者が増えた場合はシミュレーション会員登録料の徴収、および使用料を消費者に負担させることも視野に入れる。

(2)シミュレーターの保守と維持
 電気代等はかなりの負担が予想されるため、電力会社にアンペアの拡大を要請。シミュレーターの整備・保守については作品上あまり必要ない(つまりお金があまりかからない)と思われるが、入力データが多すぎると壊れる傾向がある。

(3)担保 
 開発費用はおそらく莫大な費用が必要であっただろうから、無担保ということはあまり考えられない。
 店舗クラフトマンを抵当に入れていることが推測されるが、店舗開店時にこの土地建物の購入費用もおそらくかかっているだろうから、開発費用の抵当権は必然的に2番抵当になる。
 当時不動産バブル期であったとはいえ、店舗自体はそう大きくないし、道路付けも街道などの大型道路に面しているわけではなく、幅員4メートル程度の一般市道に面しているだけ。価値はそう高くない。
 当然この物件の2番抵当になるとなると、余力はそう見込めないし、不足する担保分はどこで補うかというと、不動産以外の担保設定しか考えられない。
 そうなってくると、もはやできたてほやほやのシミュレーションマシン程度しかメボシイものは見当たらないので、この権利を担保に取るしかなくなってくる。
 ここまで話が煮詰まってくると、「もしクラフトマン店長がマシンの開発に失敗していたら」というIFにつきあたってしまう。
融資を実行した(どこかは知らんが)金融機関にとっても「シミュレーター開発費用」融資は危険度Aであったに違いない。

(4)まとめ
 クラフトマン店長は子供に優しい理解のある様子をみせておきながら、開発費用返済のために子供たちのキットを間接的に壊し続け、さらにプラモデルを納入して子供たちに売りつけるという、危険な綱渡りを長期にわたって続けていたことになる。
 ガンプラブームが終わるまでに、クラフトマン店長は借金の返済ができたのだろうか。