新潮から出た清張の短編集を読み終わったので、戦後史の部類に方向転換。

●昭和史(下)東洋経済新報社 中村隆英
昨年夏頃に発売された文庫版。当初は本屋の1コーナーを平積みで埋め尽くした本で、やたらと「名著!」とアオリ文句がうたわれていたことを思い出す。
読んでみるといかにも学者らしい、淡々とした教科書的な文章で、読んでも読んでも頭に全然入ってこない。
目で文章を追っかけるだけの読み方になってしまい、本としての印象が残らない。
ある程度売れた本なのだろうけど、積ん読になっている人も多いんだろうなあ。

児玉誉士夫 巨魁の昭和史 文春新書 有馬哲夫
児玉誉士夫の名前は表向きの歴史にはなかなか登場してこないが、戦後史を顧みるに避けては通れない人物だと思う。
敗戦前後に大陸と日本を往復、大量の宝石等の財産を日本に持ち帰り、戦後の活動資金とした。
戦後の不安定な日本の舵取り(日本の民主化・反共産)を影で行い、その後はキングメーカーとなって政界・財界の重鎮となった。
下山事件関連の本を読むと名前はよく出てくるし、小説の金融腐食列島などにも大物フィクサーとして登場する。
前述の昭和史が「表向きの歴史」であり、その表に出てこない裏側の一部が書かれた本。

●日本の黒い霧(上)
いわずと知れた清張の代表作の一つ。
高校3年の夏期講習のときに講師がこの本を紹介。講義後本屋で買い求めた。
(奥付をみると1984年5月)
清張の戦後史は「アメリカ謀略史観」と言えるので、偏りがあることを前提に読みすすめる必要があるが、さすが作家だけに読みやすく面白い。